作家の高橋和巳・・・

 学生運動全盛の時代に三島由紀夫は右翼でサムライで自決で決着をつけたが、左翼作家の高橋和巳は39歳で若死。

 自殺ではなかったが恐ろしく難しい『邪宗門』という宗教文学の長編小説を書きすぎてはかない命でもあった。

高橋和巳

 高橋和巳は極めて現実的な作家であって『ウィザードリィ』の世界のような怪奇と幻想というイメージからはかけ離れた作家ではあるが、ギリシャの哲学者の話も評論で書いていてライカーガスというかリュコルギスのこともいっていたような記憶がある。

 高橋和巳も小説に命を吹き込みすぎてライカーガスのようなガリガリ亡者になって39歳でやつれた姿になってしまい、晩年は悲劇的な結末でもあったのだが。

 それで一時期、自分も作家の高橋和巳の『邪宗門』とかに興味をもったりして高く評価していたこともあるが、そのうち、高橋和巳の小説は読まなくなってしまった。

 一種のゲームのように飽きてしまったのだろう。

 オウム真理教事件もあって高橋和巳の『邪宗門』という小説がすごいことをいっている、と思うようになって読んでいたこともあったが、今にして思えば『ウィザードリィ』の迷宮体験のような読書体験でもあった。

 もしかしたら『ウィザードリィ』が好きなアニメ監督の押井守も高橋和巳のことは知っているのではないか?と思ってしまうが、どうだろうか?


 兄、姉の三人兄弟の末っ子。血液型O型。父は興信所で私立探偵を行なっていたが収入は専ら母によるものであり、また押井自身は自分の思い描く探偵像と大きく離れている父親の仕事に複雑な心境だった。

 父はシェイクスピアを小説家と勘違いするなど、文化の知識に乏しかったと言う。

 小学生時代はパイロットを目指していたが、運動神経が良くなかったため断念。体育の成績だけが、1か2だったと語っている。他の学科の成績は全て5であったという。

 高校時代、羽田闘争をきっかけに学生運動に参加。運動の目論見がばれた父親には大菩薩峠の山小屋に軟禁され、そのうちに学生運動のピークは過ぎ、後に押井の運動に対する熱も冷め、父の作戦通り見事に更生させられたという。

 山小屋では受験勉強もしていた。学生運動は後に押井の原風景となって、いくつもの作品に顔を出している。後に自らの世代を「(学生運動という祭りに)遅れてきた世代」と語っている。

 またコンピュータRPG『ウィザードリィ』の影響を強く受けており、『機動警察パトレイバー2 the Movie』には「トレボー」「ワイバーン」など『ウィザードリィ』にちなんだ名前が劇中に登場する。

 『アヴァロン』に至っては、『ウィザードリィ』を押井が独自の解釈で映像化したものであり、押井が脚本を担当した『パトレイバー』TV版の『地下迷宮物件』および『ダンジョン再び』は、エピソードそのものが『ウィザードリィ』のパロディとなっている。

押井守とは?

 押井守も『ウィザードリィ』が大好きだと宣言しているのだが、学生運動世代で大江健三郎の『万延元年のフットボール』とか高橋和巳の『邪宗門』とか『悲の器』とか『憂鬱なる党派』などの作品が読んでいて当然の時代だったはずなのでもちろん高橋和巳のことは『ウィザードリィ』で遊んでいた時も知っていたのか?と思う。

 G-MAGで善の魔法使いで たかはし かずみ みたいに考えてキャラクターを製作していたかもしれんよ・・と我ながら思ってしまうが、押井守だったらこういう発想もまたあるとちょっと思ってしまうのだ。

 今では忘れ去られた作家の高橋和巳なのだが滅び行く左翼作家でもあったのは確かで自分は一時期、ライカーガスの姿を見ると高橋和巳のなれの果て・・・と思ってしまったりもしたのだが。
 
 人によっては高橋和巳は三島由紀夫のように思い入れもあるだろうし、39歳で夭折した想いを『ウィザードリィ』の世界で輪廻転生させている人ももしかしたらいるかも・・・

 押井守がWIZフリークで学生運動世代となると高橋和巳のことは知っていてイマジネーションも膨らませてアニメ作家らしい構想やインスピレーションも受けていたとは思うのだが、気になる話でもある。